神戸 旧乾邸

近畿

旧乾邸とは

旧乾邸は、1936年頃(昭和11年頃)、乾汽船株式会社を設立した乾新治氏の自宅として、旧住吉村(現在の東灘区住吉山手)の山麓部に建築され邸宅です。
様式建築の名手として名を馳せた渡邊節氏の設計だそうです。
敷地は約1200坪あり、かつては和館もあったそうですが、現在は洋館だけ残っています。
阪神間の昭和戦前期大邸宅の風格を伝える貴重な存在です。
建物は神戸市指定有形文化財に、庭園は神戸市指定名勝になっています。

観覧方法

例年春と秋に神戸市が特別観覧を開催しており、事前申込みをして当選しないと観覧できません。
近くの白鶴美術館を訪れた時に気になる建物があり、家に帰って調べてみると旧乾邸と分かり、私も一度特別観覧に往復はがきで申し込んだことがあったのですが外れてしまいました。
そんな旧乾邸が今年は特別観覧以外に10月28日(木)~10月31日(日)の4日間に限り、白鶴美術館の秋季展開催にあわせて、美術館来館者を対象に旧乾邸を公開するという、白鶴美術館とのコラボ企画が開催されました。
白鶴美術館の入館券(半券)を提示するだけで観覧することができるということで、このチャンスを逃すまいと観覧してきました。
当日は多くの方が観覧に来られていました。
敷地内には入れたものの、コロナの影響で建物の中に入れる人数を制限していたため、中に入るまで約1時間くらい外で待ちました。

建物について

建物は洋館の主屋、土蔵、ガレージ、待合所が残っています。
内部を観覧ができるのは鉄筋コンクリート造3階地下1階建て、一部木造の主屋だけになります。
主屋以外は外からのみ見ることができます。

主屋の平面はL字形をしていて、洋風を基調とした中に巧みに和洋を折衷し、重厚さの中に繊細なデザインを取り込まれています。
南面に主要な部屋が配置されていて、接客上、南東部を最も重視しているようで、2階まで吹き抜けのゲストルームがあります。

ゲストルームの上の3階部分にサンルームがあり、東、南、北の眺望を活かした空間になっています。
山麓部にあるため眺めは良く、街並みの向こうに海を望むことができます。

南面中央部に外観上最も象徴的となる張り出し窓のある食堂があり、隣の南西部の位置に和室があります。
和室には縁側があり、洋館でありながら和の雰囲気を感じることもできます。
2階の南面中央部は主人寝室(観覧時は応接室の様になっていますが)で、南西部には婦人寝室があり、その間に洗面、浴室があります。

北側は1階には、事務室、料理場、配膳室、女中室、雇人食堂などがあり、2階には女中室、衣裳部屋、バルコニーなどがあり、2階の北側には和室が3部屋並びます。

ゲストルームには暖炉やシャンデリアがあったり、玄関ホールの階段横にはステンドグラスの窓やタペストリーがあったりと内部も素敵な空間が広がっています。

庭園について

庭園は、前庭、洋式庭園、和式庭園、茶庭(現存せず)があります。
機能によって、来客を迎える場の「前庭」、もてなす場の「洋式庭園」、くつろぎ憩う場の「和式庭園」、趣向を楽しむ場の「茶庭(露地)」に分けられます。
庭全体としては往時の姿をよく残し、地域の特性をうまく活かした作庭例として、この時代の庭園を鑑賞し、理解する上で貴重なものとされているそうです。
前庭は正門からアプローチを経て車寄せ、玄関へと至ります。

和式庭園には流れを有し、滝もあります。
要所に石塔や石燈籠が据えられ、常緑樹やモミジなどの落葉樹も植えられていています。

洋式庭園は主屋南側に造られた開放的な庭園です。
テラスがあり、芝生が広がります。
周りに常緑樹を中心に花木が植えられていて、四季折々の彩を楽しむ空間になっています。
天気の良い日には芝生に座ってのんびりするのも良いだろうなあと思ったりしました。

旧乾邸のある界隈は近代になって開発された住宅地で、大正時代頃から関西の財界人などが居を構え、大邸宅が建ち並んでいたそうで、現在も閑静な住宅街です。
旧乾邸は、特別観覧や今回のような企画でないと観覧できませんが、また応募の機会がある時にはぜひ応募して観覧されることをお薦めします。

アクセス:阪急神戸線御影駅から北東へ徒歩約10分
     阪神本線御影駅または JR東海道本線(JR神戸線) 住吉駅から神戸市営バス38系統
     渦森台行「白鶴美術館前」下車南西へ徒歩約2分